俺様先生と秘密の授業【完全版】

 そして、昼休み。

 あたしたちは、屋上にいた。




 岸君と、二人きりで。

 もちろん、別に。

 デートっていうわけじゃない。

 作戦会議だ。

 いじめグループから、岸君が逃げ出すために。

「ねぇ、どうするつもりなの?」

 心配そうな、岸君のセリフに、あたしはうんってうなづいた。

「だから、特攻服ってやつを、岸君が着て見せれば、良いんでしょ?」

 今日の放課後、近所の公園で待ち合わせ。

 そういうことに、決まったから。

「簡単に言うけど、そんな特殊な服に心当たりがあるの?」

 あたしには、昨日、吉住さんから借りた上着がある。

 ……ないしょ、だけどね。

 泣く子も黙る沈黙の狼、トップ4の本物の上着なら、誰も文句は言わないでしょう?

 本当は、今日返す予定だったけど……一日くらい、良いかな?

 これなら、兄貴に話をして、何とかしてもらう、みたいな最悪な方法をとらなくて良いし。

 ちょっと、岸君が着てみせるだけだから、問題なんか、無いよね?
 
 だから。

「あるよ」って気軽に答えたら、岸君は、驚いたような声で言った。

「どうして、そんなものを加月さんが持ってるのよっ……?」

 し、しまった!

「や、やあね。
 まさか、本物が手に入るわけないじゃない。
 兄貴が、いかにもそれっぽい、アヤシイ上着を持ってるから、それを借りて来ようと思ってるの」

「ふ~~ん……そう。
 いい考えだと思うけど……でも、それで、ごまかすことができる……かな?」