俺様先生と秘密の授業【完全版】

「もう……やめてよ。
 私だけならともかく、加月さんをこれ以上巻きこんだりしたら……!
 いい加減にしないと、怒るよ?」

 そう。

 案外、しっかりとした声は、確かに岸君自身の口から、聞こえた。

 相変わらず震える手で、鞄を抱きしめたまま。

 長い前髪を払わないまま。

 どこを見ているのか、今一つ判らなかったけれども。

 精一杯、ハッタリをかましているようで。

 震える声が少し、おさまっている。

 イジメグループのヒトビトも。

 初めて聞いた、岸君の反撃めいた言葉に、ちょっと驚いた顔をして……すぐ、はじけるように笑った。

「お、さすがに、ガンバル気になった?
 でも、まだ手が震えてるぜ?」

「怒ったら、岸君はナニしてくれるのかな~~
 だたっこパンチじゃきかねーよ?
 それとも、土下座?
 あはははは♪」

 岸君が、何もできないことをみこして。

 完全に、莫迦にして笑っているヒトビトに、岸君は、もう一度、声を張り上げた。
 
「……昨日、暴走族が学校に来たの、知ってる?
 あれ、実は。
 私のお迎え、なのよ?」


 ……は?

 岸君は、一体。

 何を言ってるの?