でも、そんなコトはちっとも知らない(はず)の伊井田さんは、目をきらっきらさせて言った。

「早瀬倉先生って、やばい~~
 カッコイイ~~」

 そうそう、カッコイイ~~って。

 ……へ?

「伊井田さん……早瀬倉先生が趣味なんだ?」

 ちょっと驚いて聞き返したら、伊井田さんはうんうん、とうなづいた。

「だって、イケメンじゃん?」

 まあ、確かに、顔だけは良いよね。

「それに、昨日のことで、ケンカにも強いってこと、判ったし」

 ……そっかなぁ……

「こーなったら、わたし、アタックするもんね!
 実は、もう。
 昼休みに一緒にご飯食べるために、お弁当を持ってきたの~~」

「早っ!」

 思わずつぶやいた、あたしの声に。

 伊井田さんは、ひょい、とキレイな片眉を上げた。

「まさか、カッキーも早瀬倉先生、狙ってる?」

「ま、まさか」

 なんて、思わず即答した、あたしに。

 伊井田さんは「だよね~~」とか言って、げらげらと笑った。

「カッキーには、もう、彼氏いるもんね?
 暗っら~~い、カッキーに超、お似合いな、旦那?」

 ……何よ、ソレ

「……別に、彼氏でも、旦那でもないし」

 伊井田さんのココロない言葉に腹を立てながら、これも即答したのに。

 彼女はちっとも聞いちゃ、いなかった。

 ……だって。
 
 その、彼本人が、教室に入って来たから。