涙が出て、止まらないあたしの手を、伊井田さんが、とってくれた。

 泣いて震える肩を、直斗が、抱きしめてくれた。

 涙の向こうで、吉住さんが、ほっとしたようにほほ笑んで。

 あたし達の後ろに従って、歩いて来るのが、見えた。

 そして、前には。

 まだ、知らない。

 けれども。

 ちゃんと付き合ったら、きっと、仲間になってくれるだろう梢城高の生徒たちと。

 遥かな未来(さき)まで続いてく、オトナへの階段が見えたような気がした。



 あたしは、これからも、悩みながら、迷いながら、一歩一歩前に、進んでく。

 ずっと続く、上向きの階段は、きっと、辛いかもしれないけれど。

 あたしは、一人じゃない。

 みんなで、一緒に手をつないで、昇って行けるんだ。


 涙を拭いて、顔をあげたあたしの耳に。

 きーん、こーん……と。

 聞きなれた、学校のチャイムが聞こえた。

 これから、月曜日が……一週間が、始まる合図だ。

 だけども、あたしには。

 もっと、もっと大きな始まりを告げる鐘の音みたいに聞こえて。

 なんだかとっても、嬉しかった。





〈了〉

 H22.9.27 PM13:13