今まで、あたし。

 自分のことだけで、手いっぱいで、ヒトの事を考えている余裕なんてなかった。

 特殊な環境で暮らしているから、イジメられるんだと。

 どうにか自分の素姓が、バレないようにって、息を押し殺して、生きて来た。

 自分ばっかりが、不幸で。

 なんであたしばっかりが苦労してるんだろうって、思ってた。

 けれども……それ、間違いだった。

 直斗も、岸君も、吉住さんも、兄貴も。

 そして、伊井田さんや、天竜さん、東屋さんも。

 あるいは、もしかしたら、岸君をイジメていたクラスメートのヒトビトだって。

 きっと。

 それぞれが、それぞれの想いを抱えて、悩んで、迷って、暮らしてる。

 そして、もし。

 自分の力で解決できないほどの、大きな困ったことがあるのなら。

 ひとりきりでじっと抱え込まずに、誰かに話してみても、良いんだ。

 今まで、クラスでも、ほとんど一人りでいたつもりだったけれど。

 振り返れば、そこに、仲間になってくれる。

 友達になってくれるヒトがいたってコトに気がついた……幸せ。