俺様先生と秘密の授業【完全版】

 あたしは、涙が溢れてほとんど見え無い視界の中。

 直斗と伊井田さんを手探りで、やっと探して言った。

「ありが……とう……でも、もう、良いから……!」

「愛……加月?」

 もう、みんなと戦わなくて、良いから……と。

 あたしが引き止めたから直斗が、戸惑っているのが判る。

 出来ることなら、あたしだって。

 直斗の居るこの学校に通って行きたかった。

 伊井田さんや、吉住さんや、元気になった岸君と、同好会だって、やってみたかった。

 だけど。

「あたしが居ると……みんなが、危ないから……」

 震える声のあたしに、伊井田さんは、強く……優しく睨んだ。

「何よ、カッキー!
 弱気になっちゃ、ダメよ?
 天竜組が来たとき、カッキーも勇気を出して、名乗り出てくれたじゃない!?
 本当は、黙ってたって良かったのに、わざわざ出てくれたのは。
 この梢城高の皆を守りたかったからでしょう?」

「うん……」

「それなら、お返しに。
 ここにいる皆で少しずつ勇気を出し合えば、カッキー一人くらい、守れない?」

 ねぇ、みんな!?

 って言う伊井田さんの呼びかけに……

 生徒の中の、かなり多くのヒト達が頷くのを見て、改めて、涙が出て来た。