俺様先生と秘密の授業【完全版】

 言って、直斗は、怒鳴った。

「そういうヤツらは『悪いヤツら』って言わないのか!?」

 うぉん、と、まるで。

 狼が吠えるような声に。

 辺りは、しん、と静かになった。

「ヒトには、魔が差すことが、ある。
 意地や嫉妬で、ココロが傾くことがある。
 勇気が少しだけ足りずに、声が出せねぇことがある。
 自分は、普通に暮らしたくても、周りが許さねぇことがある。
 それをすべて『悪いやつ』だとして『正しいやつ』が追い出すのか?」

 そこまで言って、直斗は、静かに目を伏せた。

「そもそも『正しいやつ』なんて居るのか?」

「……」

「どんなヤツでも、ただ排除しあうだけじゃ、その場にヒトが居なくなるだけで、何の解決にも、ならないだろう?
 完璧な人間なんていないから。
 良く話しあって、弱い所同士、支えあわないとダメなんじゃねぇのか?」

 ……直斗……

 直斗が、みんなの前で、戦ってくれてる。

 例え、拳骨を握るケンカは、出来なくても、直斗は、強い。

 強い……!

 さっきまでのピリピリとした緊張感が、大分柔らかくなって……

 それに、聞きなれた声が、続いた。