俺様先生と秘密の授業【完全版】

 別に岸君のバイクは、普通で。

 狼のバイクが、音を出さないだけなのに、片目をつむって大げさに顔をしかめる吉住さんに、ほっとして。

 あたしは、ちょっと笑った。

 ……けれども。

 昇降口の、げた箱で、靴をはきかえようとして止められる。

「……不良女は、二度と学校に来るなよ」

 なんて、その声に、見れば。

 岸君をイジメ続けた挙句、天竜組に反撃された、クラスのグループが、腕組みして、立っていた。

「不良女、だと?
 誰のことだ?
 もう一度言ってみろ!」

 あたしを庇うように、吉住さんが前に出ると。

 グループリーダーが、怯えたように一歩下がってどなった。

「ほ、ほら、見ろ!
 殴るのか?
 殴るのか!?
 知ってるんだぞ!
 お前が『沈黙の狼』って言う、暴走族の頭(あたま)だってこと!
 加月は、自分の手下を兄貴に偽装して!
 学校に潜入させた揚句。
 言うことをきかない奴は、全部力でねじ伏せるのか!?」

「そんなこと、しないもんっ!」

 騒ぎに、他の生徒たちがだんだん集まって来るのを見ながら、リーダーがあたしの方を指差した。