……やっぱり、怖いんだろうな。
天竜組に捕まった時。
あたしの正体を知った伊井田さんは。
『別に、大したことないじゃない』って言ってくれたけど……まあ、普通は、ねぇ。
思わず出たため息に。
吉住さんは、自分の正体をバラしたこと、後悔してますかって聞かれたけど……。
あたしは、良く考えて、ううん、ってクビを振った。
だって、あの時は、傷ついてゆく人々を。
壊れてゆく学校を、黙って見ているわけには、いかなかったんだもん。
でも……
「ごめんね?
よし……お兄ちゃん。
昼間の学校、通えなくなったよね?
バイク同好会とか、楽しいコト、たくさん待ってたのに……
しかも『学校』じゃないと……
伊井田さんや天竜組の縁続きの岸君とも、逢えないね?」
そう、言ったあたしに、吉住さんは、いいえ、と首を振った。
「短い間でしたが、楽しい夢を見させていただきました。
伊井田さんや岸とは、メルアドの交換済みですし。
特に、岸は。
今後、治療に専念するために、天竜組と別行動をとるんでしょう?
たまには、見舞いぐらいしてもいいし。
身体が回復しても、夜の街ですぐ逢えるんじゃないですか?
ヤツの単車の排気音は、下品なほど大きいですし。
聞きたくなくても、耳に入ってきますから」



