潮騒の音が、遠く。
そして、近くに聞こえていた。
ここは、海岸の広場。
昔、沈黙の狼が使ってた集会所で。
直斗があたしをバイクの後ろに乗せて、天竜組と岸君を振りきって来た所だけど……
そのことが、もう、ずっと前の事みたいに思える。
そして、今日。
自分の単車に、伊井田さんを乗せた吉住さんと病院の駐車場で別れてから。
直斗は、ここにあたしをつれて来たんだ。
近くに住んでるヒト達は。
ここが危険な暴走族のたまり場だと知っていたから、近寄りもしないし。
沈黙の狼たちは、その傷ついた身体を休めるために、一時的に解散し。
兄貴は、今回の件の後始末で忙しく。
こっちから、緊急電話でもかけない限り、やって来はしない。
あたしと直斗は、二人きりだった。
広い広場の片隅に、二人で乗って来た、単車をぽつりと置いて。
海がキレイに見える岩場に、直斗は腰を下ろした。



