俺様先生と秘密の授業【完全版】

「悪いとは、思っていたけれど。
 ……彼氏の座を降りようと思わなかったり、キス、しようとしたりして……ごめんね?」

「岸君……」

「出来れば……早瀬倉と戦って、愛莉さんを、ちゃんとオレだけの方に、向かせてみたかった。
 だけども。
 今の先の無いままのオレじゃ、戦う前に、早瀬倉に負けてるよ」

 その場限りの恋人ならば、自分にだって勝算があるかもしれなかった。

 だけども、はるかな、未来(さき)を見るならば……

 早瀬倉を蹴散らして、あたしを奪って行くワケには、行かないと、岸君は、言う。

 自分を、忘れて、自由に、なって?

 言葉の外に聞こえる岸君の声は。

 それは……岸君を一番に愛せなかった、あたしに対する、優しさ以外になく………

 胸が、痛んだ。

 あたし。

 岸君のこと、好き。

 だけど、一番に、愛せなくて、ごめんね。

 なんて、言えるはずも無く。

 ただ涙ばかりが出るあたしに岸君が微笑んだ。

「もちろん、オレの身体が、ちゃんと治っても、まだ二人して意地を張り合ってたり。
 ちゃんとカレカノになってなければ、オレ、絶対、もう一度邪魔しに来るから」