え?

 そんな風に言う、兄貴の言葉に、あたしは、驚いた。

「2、3日って……!
 今週は、年に一度の追悼走で、毎晩走る予定じゃなかったの?
 今日だけ病院に行けば、もう、あたしのコトは、放っといていいのに」

 本当に、困ったってわけじゃないから、そう言ったのに。

 兄貴は、ちょっと怖い顔をして、めっ、とにらんだ。

「ダメ。
 愛莉ちゃん。
 自分が、どれだけ酷い傷なのか、自覚ある?
 ガラス片なんて……多分、一生残っちゃう傷だよ?
 僕の方は大丈夫。
 大総長、なんて持ち上げられても、結局現役離れたOBだし。
 最後の日にきちっとキメめれば、問題ないから」

「でも……!」

 もう一度、言いかけたあたしに、兄貴は、すぃ、と目を細めた。

「もう決めたことだから。
 これだけは、譲れないよ?
 いくら、愛莉ちゃんが良いって言ったって、ね」