俺様先生と秘密の授業【完全版】

「え……?」

 思いもよらない、岸君の言葉に、あたしは、聞き返した。

「岸君を……待ってちゃダメなの……?」

「……うん」

 あたしの言葉に、岸君は、寂しそうに頷いた。

「病気が治るように、オレ、全力で頑張るけれど。
 正直な所、どれだけの時間がかかるか判らないし……もしかしたら、治らないかもしれないのに。
 何年も、ずっと待っててなんて、言えないよ。
 それに何よりも……愛莉さん……」

 岸君は、そこまで言って、あたしを見た。

「……本当は、オレより好きな男(ひと)いるでしょう……?」



 どき。


 ……直斗の顔が、浮かんで、消える。


 だけど。

 まさか、そんな。

 命を賭けて、あたしを庇ってくれた『彼氏』の目の前で言えるワケも無く。

「な、何言ってんのよ!
 あたし、岸君と付き合うって、宣言したじゃない!」

 なんて、慌てて言ったあたしに、岸君が、優しく、でも寂しそうに微笑んだ。

「責めているんじゃないんだ。
 本当は、最初から、判ってたんだ。
 愛莉さんが、早瀬倉のこと、好きなこと。
 オレが、愛莉さんを、引き止めちゃいけないこと……」