俺様先生と秘密の授業【完全版】

 岸君の病気は。

 普通なら内臓の中で二つあるはずの臓器が、生まれつき一つしかない上に。

 それの調子が悪くなって起こったんだそうだ。

 移植手術をすれば、治るけど。

 移植って、元気なヒトのお腹をわざわざ切って、ほしい内臓を貰うか。

 脳死してしまった、知らない誰かから貰わなくちゃいけなくて。

 ……それがすごく怖かったんだ、って岸君は、言った。

「……他に色々問題もあって、大変だけど。
 それでも。
 何もしないで、命の無駄遣いしてる場合じゃないって、思った」

「岸君……」

「完全に治るまで、どれだけ長くかかるか判らない。
 でも絶対、治ってやる!」

 そう言って、ゲンコツを握る岸君には。

 例え、女の子みたいな格好をしていても。

 もう、弱々しさなんて少しも見られない。

 その意志の強さが、きらきらと眩しくて、あたしは、思わず、目を細めた。

「岸君、頑張ってね?
 病気が治るように、応援してるし。
 元気になって、あたしの所に帰って来るまで待ってるから」

 そんなあたしに、岸君は、優しく笑った。

「応援は、力を貰えるから、欲しいな。
 でも、オレを待ってちゃダメだよ」