俺様先生と秘密の授業【完全版】

「本当は、もっと早く、助けに行きたかったのよ。
 だけど、器械から、抜けたのは良かったけど。
 しばらく貧血で動けなくて……
 最後の最後に、間にあって本当に良かった、と思うわ」

 そう言って、岸君は、落ち込んだように目を伏せた。

「一歩間違えれば、傷ついたのは、愛莉さんの方だったと……
 そう、考えると私の方が、怖くて、ね……」

 岸君は、自分の手を眺めて言った。

「こんな大騒ぎが、またあるかどうかわからないけれど。
 このままの私じゃ、もう例え命を幾つ賭けても、愛莉さんを守れないよ。
 それに、毎日がずっと平和だったとしても……
 一日おきに器械に掛かっているようじゃ、愛莉さんにどんな迷惑がかかるか判らない」

「迷惑なんて、そんなこと……」

 ……無い、と言おうとしたあたしに、岸君は、首を振った。

「こんな自分は、私……オレ自身が、イヤなんだよ。
 今まで、オレ。
 病気を治す努力もしないクセに、だんだん悪くなってゆく自分のカラダがイヤで、現実から目をそむけてた。
 どうせ先がないんだからって、面倒事が起きてもほったらかしてて。
 クラスメートに酷く、イジメられても。
 ……それで、シャントが壊れて死んじゃっても、別にいいやって」