俺様先生と秘密の授業【完全版】

「わたし……たち?」

 イヤな予感に、見れば。

 天竜さんが、ひょい、と廊下の曲がり角から現れた。

 長かった髪は、短くなり。

 スーツ姿から、ギャル男みたいな服に変わったモノだから。

 銀の髪や紅い瞳が、生まれつきじゃなく。

 わざわざ染めたり、カラーコンタクトを入れたみたいに、見える。

「……!」

 さすがに、二度もナイフを突き付けられて、挙句に一回は、刺されかけたんだもん。

 雰囲気は、大分変ったけれど。

 怖くて、思わず震えたわたしを無視して。

 天竜さんは、東屋さんの肩を抱き、そのまま連れて行ってしまった。



 ……そか。

 これから、そうやって、天竜さんは、暮らしてゆくんだ。




 あたし、やっぱり天竜さんのコト、怖かったし、絶対好きになれなかったけど。

 東屋さんと、天竜さんが二人で帰る、後姿が。

 なんだかとっても、嬉しかった。