俺様先生と秘密の授業【完全版】

 兄貴は、イヤそうに眉を寄せた。

「……けれども……オレも親父と、あんまり変わらなかったんだ
 オレも、自分の欲望のおもむくままに。
 一方的な感情を押しつけて……愛莉を傷つけた」

 そか。

 あのキスのコト……あたしもびっくりしたけれど。

 兄貴の方も、かなり落ち込んでる表情(かお)してる。

「愛莉の気持ちも。
 もし、本当に兄妹だった時のリスクも何も考えずに、突っ走りかけたオレは、かなり、どうかしてた」

「……」

「オレは、愛莉の事が、好きだ。
 それは、何にも……オレ自身の命にも……代え難いほど。
 出来ることなら、なるべく長くまで、オレの側にいてほしいとも思っている。
 ……親父でさえも、油断のならないこの世界で。
 僕の心から休める場所でいてほしいと、思う。
 でも、それは。
 欲望のはけ口のために、居てほしいわけじゃない。
 愛莉の幸せを踏みにじってまで、留めていたいものじゃない。
 そんなことに、改めて気がついたよ」


 言って、兄貴は。

 あたしに近寄ろうともせず、目を伏せた。

「だから、これからも。
 僕の大事な妹(かぞく)で、いて……くれるかな?」