「自分から仕掛けたくせに、勝手なやつだな」

 半ば呆れたように言う兄貴に、天竜さんは笑う。

「あまり、ヒトのモノばかりを望まずに、自分が何を持っているのか、ゆっくり考える気になったんですよ。
 今度出会うときには、子供みたいな感情に走らず。
 ビジネスライクに対決させていただきます。
 裏世界の頂点って言う奴に、一度立ってみたい気持ちだけは、変わりませんから」

 言って、天竜さんは、自分が率いるチームメイトに拳をあげ、叫んだ。

「さあ、仲間たち!
 帰りましょう! 新しい『家』へ!」

 おおっ!

 天竜さんの呼びかけに、藤沢、天竜組は、うるさい騒音をまき散らすと、天竜さんに続いて、移動を始めた。

「……大総長、天竜組の後を追うか、戦いますか?」

 そんな天竜組にを見て。

 そっと、側に近寄って聞いてきた、吉住さんに、兄貴は苦く嗤った。

「今までだって、ヤツらの本拠地をつきとめようとして、ことごとくまかれたんだ。
 何の用意もせずに追いかけても、雑魚はともかく天竜は無駄だろうよ。
 しかも、狼たちは、見事に落とし穴にはまって、まともに、戦えるほど士気が無い。
 今日のところは、もういい」