岸君の事を親友だと言った、東屋さんが、黙って、手を組み頭を垂れた。

 吉住さんが、唇を噛んで、ハンドルを握り締め、アクセルを踏んだ。

 そして。

 岸君を生かすことが、意地だといった、直斗は。

 だんだん冷えてゆく、岸君を抱えたまま、呻く。

「……今度こそ、絶対……」

 ここにはいない天竜さんはもちろん、伊井田さんだって、岸君の無事を祈っているはずだった。


 生きて。


 皆の思いは、悲しいほどに一緒だったのに……

 岸君の呼吸は、だんだん細く、浅くなる。

 生きて……!

 お願いだから……!

 ……

 けれども。

 皆の祈りも虚しく。

 命は、容赦なく、こぼれて落ちて。

 岸君が生涯最後の呼吸を始める……











 ……寸前だった。

 明るい声が、車の中に、響く。

「病院の灯り、確認しました!!
 岸! 頑張れ! もう、本当にすぐだからな……!」

 そんな吉住さんの声が聞こえたのか。

 直斗の腕の中で岸君は。

 ようやく安心したかのように。

 小さく、ほほ笑んだようだった。