俺様先生と秘密の授業【完全版】


「……くっそ!
 出血が、ちっとも治まらねぇ!
 器械にかかるのに、血液凝固を止める薬(ヤツ)を使ってるから、余計に厄介だぜ!」

 天竜さんの絶叫を聞き。

 みるみる内に、紅く染まる布を抑えながら、直斗が吐き捨てるように言った。

「お前にも……『家族』が居るんじゃないか?
 それを失うかもしれない痛みが……苦しみが、判ったか?」

 吉住さんの手助けで、穴から這い上がった兄貴の言葉に、天竜さんはつぶやいた。

「疾風は……疾風は。
 ……死ぬ……のか……?」

「誰が、死なせるかよ!」

 憔悴しきった天竜さんに、直斗は強く睨みつけた。

「天竜!
 お前の意地が、この莫迦げた争いに、あるというならのなら!
 俺の意地は、こいつの命を助けることにある!
 こんな風に、消えていくかもしれねぇ命を見すごさねぇ為に。
 俺は、狼を去って教師になったんだ!」

 そして、直斗は、兄貴と天竜さんの二人に向かって怒鳴る。

「本当は、出血がもう少し治まってからの方が良いんだが。仕方がねぇ。
 天竜も、狼も無え!
 皆で、協力して一刻も早く岸を病院につれて行かないと、岸は確実に死ぬぞ!」

 ……だが、直斗……と、抗議の声をあげかけた兄貴に、直斗は睨む。

「岸の傷は、もしかしたら愛莉の傷かもしれなかったんだ。
 愛莉の命の恩人を助けると思えば、狼だって、依存はねぇはずだ!」