俺様先生と秘密の授業【完全版】

 
 天竜さんは、長い髪を乱し、両手をついて、岸君の顔を祈る様に覗き込んだ。

 ……けれども。

 岸君の目は、開かずに……

 こうしている間にも、血が、恐ろしいほどの勢いで流れてゆく。

 そこに、はっきりとした『死』の影をみつけ、天竜さんが叫ぶ。 

「……僕は……なんて事を……!
 頼む、目を開けてくれ!
 死なないでくれ!!」

 ムカシ。
 
 追われるように捨てて来た故郷から来た岸君が。

 どうしても、バイクに乗りたいんだと、目を輝かせたに違いない。

 弱いカラダと、ココロを抱えながら、誰も頼るヒトのいない、孤独な街で、二人。

 どんなふうに暮らして来たんだろう。

 どうやって、生きて来たんだろう。



 大事な大事なココロのよりどころを、自分で刺してしまった……悲しみ。


 もし、この世に魂自体が、泣く事があるのなら。

 叫ぶことがあるのなら、まさしく、これがそうだった、と思う。


「疾風……頼む……
 僕を置いて……逝かないで……くれ……!!!」


 天竜さんの『絶叫』……だった。