俺様先生と秘密の授業【完全版】

 さすがに、それは出来ないと。

 半分悲鳴になった、東屋さんの声を無視して、天竜さんは、両手で持ったナイフを、全身を使って、大きく振りかぶった。

「バイバイ、愛莉さん……だっけ?
 君に恨みは無かったんだけどね?」


「「「天竜!!!」」」


 その場にいた直斗と吉住さん。

 そして、直接見えてたわけじゃ無くても、気配を察知したらしい、兄貴の絶叫が重なった。

 それから、ナイフの刃があたしに向かって落ちて来るまでの数秒間は。

 まるで、スローモーションを見ているみたいだった。

 騒ぎの間中、ずっと自分を縛っていた縄と格闘していたらしい。

 やっと手を自由にした直斗と、吉住さんは。

 あたしの方に、駆けつけようとして。

 天竜組のヒトに羽交い絞めにされたのが、目の端に映った。

 現場の緊張感に耐えきれなかった伊井田さんが、鋭い悲鳴を上げる。

 ナイフを振り下ろす、天竜さんの狂ったような笑い顔が見えた。

 あたしも怖くて、目を閉じた。

 ……次の瞬間。


 ざくっ

 ……と言う、ナイフが肉を切り裂く音と。

 ば、た、た、た

 と。

 沢山の血が流れる音がした。