俺様先生と秘密の授業【完全版】

「そのジャケットは、沈黙の狼の絶対権力者しか着ることが許されない、特別な上着です。
 いくら、大総長の妹さんとはいえ。
 沈黙の狼の指揮に直接関係ないヒトが着てはいけません」

 うわ~~っ、そうだったんだ!

 兄貴は、別に何の気負いもなく、フツーに着ていたけれど。

 そんな重い服なんだ……

 吉住さんの言葉に、あたしは、慌てて、手を引っ込めた。

 だけども、兄貴の方は、何やら機嫌が悪そうに、吉住さんを睨んでる。

「おい、吉住……」

「ですから、俺の上着を着てください」

 兄貴が、何か話そうと声をかける寸前。

 吉住さんは、片目をつぶって、あたしに言った。

 う、上手い。

 さすがに、兄貴の扱い慣れてるなぁ。

 話の腰を折られた、とか。

 割り込まれた、と言うよりは。

 兄貴の怒りの矛先を上手くずらした感じがする話し方に。

 文句をつける気が削がれたらしい。

 またか、みたいにため息をついた兄貴に、ちょっと微笑んでから、吉住さんは言った。

「俺のも、トップ4(フォー)限定の上着ですが、大総長のモノとは重さが違います。
 愛莉さんに着て貰えれば、かえってハクがつくってもんです」