俺様先生と秘密の授業【完全版】

 この場にいる、全員が。

 兄貴が、天竜さんの目の前で、土下座するかどうかに興味があった。

 あたしの腕をつかんでいるはずの、天竜組員だって。

 突き付けた、ナイフをずらし、伸びあがるようにして、兄貴を見ていた。

 ……チャンスは、今しかない!

 手足の震えが収まらないまま、あたしは、自分を捕まえているヒトに、力一杯ぶつかった。

 あたしの不意打ちに、組員は「うぁ」と、情けない声をあげて、尻もちをついた。

 ……やった! これで逃げられる!

 と、思ったのに。

 今度は、目の前にいる天竜さん本人に捕まり、地面に引き倒された。

 胸と、顎が、力一杯ウッドデッキに打ちつけられて、ここで初めて、悲鳴が出る。

「きゃ……!」

「うるさいっ、君はおとなしく、ここで俊介の情けない姿を見てるんだ!
 さあ、俊介、早く……」

 と、それ以上天竜さんは、何も言うコトが出来なかった。

 なぜなら。

 騒いだあたしを引き倒すために、片膝をつき。

 一瞬気をそらした天竜さんが、視線をあげた時。

 天竜さんの顔を、兄貴の靴底が、とらえたから。