俺様先生と秘密の授業【完全版】

「さすが、天下の水野小路じゃないですか。
 仕事が早くて、助かります。
 ……おい、誠。確認しろ」

「はい!」

 誠さんも、また、短く答えると、どこかに連絡を取り……すぐに親指を立てた。

「確かに、振り込まれてます!」

 そのやり取りを見て、兄貴は、唸るように言った。

「……さあ、愛莉を返せ」

「ふうん。
 俊介君は、自分の命も含めたこの世のすべてのものに、ほとんど執着しない男(ひと)かと思ってたんですが……違ったんですねぇ」

 今、目の前で、お金の詰まったアタッシュ・ケースをやり取りしたわけじゃないけれど。

 確かに、お金を振り込んだのに、中々あたしを手放そうとしない、天竜さんに、兄貴は、焦れて、叫んだ。

「早く、愛莉を……!」

「本当に、俊介君は、交渉が下手ですねぇ。
 そんなに欲しいモノが丸わかりだと、売り手の方は、値段を釣り上げますよ?
 普段は、鉄仮面でもつけてるんじゃないか、って言うくらい無表情のくせに。
 今じゃ、子供みたいに、何を考えているのか、良く判ります」

 あははは、と、天竜さんは冷たく嗤った。