俺様先生と秘密の授業【完全版】

 やがて。

 震えるような時間が、どれくらい経ったのか。

 煌々としたサーチライトで、ま昼のように照らされた庭に、狼たちが、集まって来た。

 その中で一人。

 長い黒髪を風に吹き流した男(ひと)が、まるで。

 闇に潜む黒い獣のような足取りで、先頭に立つ。

 そして、低い、声を出した。

「……愛莉を放せ、天竜」

 ……兄貴だ……っ!

 兄貴が、あたしを助けに来てくれたんだ!!

 兄貴のその声は、一瞬にして辺りの空気をぎしり、と凍らせるはどの、ものすごい緊張感をはらんでた。

 怒ってる。


 今まで見たことないほど、怒ってるのが判る。

 兄貴の静かな声は、刃のようで。

 敵は、もちろん、味方でさえ。

 兄貴の近くには、寄れそうにないほどだった。

「判ってるでしょうが、もちろん、ただではイヤですよ」

 まるで、一瞬に張った、氷のような、辺りの緊張感をものともせず。

 天竜さんが、一歩兄貴に近づいた。

 兄貴と同じくらいの長い髪をまた、風になびかせて。

 こうやって見ると、二人は、そっくりだった。

 見た目は、白と黒。

 光と影のようにまるで、正反対なのに。