まさか、自分が。
古今東西の物語に出てくる、ヒロイン達と、同じ経験をするなんて思いもしなかった。
あたしの腕をつかんだ天竜組の組員が。
包丁くらいの刃渡りのナイフをあたしの首に、突き付けて、叫ぶ。
いわく……
「この女の命が惜しかったら、クソ犬たちは、全員、武器をおいて、庭に出ろ……!」
まるで、そこは、ライトアップした、小劇場みたいだった。
何か、植物のツタみたいなロープが、何本も絡みあっている、一階のウッド・デッキの上。
庭の地面より、四、五十センチは、高い、台の上に。
あたしは、天竜の誰かに腕を掴まれ、立っていた。
あたし達の隣には、それぞれ、誠さんと、天竜さんが難しい顔をしていた。
それより、一歩下がった、同じくデッキの上には。
直斗と吉住さんと伊井田さんが、天竜組のメンバーに捕まっている。
しかも、彼らは、改めて、両手を縛られ、座らせられていた。
とりあえず、みんな無事、だったけれど……
刃物をつきつけられる、ってこんなに怖いものだったなんて……!。
あたし、知らなかったんだもんっ!



