狼たちは、特に。
天竜組に投降を呼びかけるつもりも、話し会いもする気は、無いようだった。
指令室になっている、天竜さんの部屋でで、あたしの耳に聞こえてくるのは。
モノの壊れる音と、あとは藤沢、天竜組の組員たちが叫ぶ怒号だけだったけれど。
どうやら狼が攻撃をはじめたらしい。
「……人質がいるのが判っているのに。
……水野小路は、ちっともためらわないの?」
天竜組員から、被害報告を聞くたび。
爪を噛んで呻く東屋さんに、吉住さんは、肩をすくめた。
「いや、大分、気を使ってるぜ?
水野小路の怒りを買った、こんな、辺りに民家の無い施設なら、普通。
開けた穴から、灯油か、ガソリンをぶちまけたあと、火をつけて、出て来たやつを捕獲、以上、終了。
……にしちまうのに。
ちゃんと一部屋づつ、面倒を見ている音がする」
「……怖っ」
さすがの伊井田さんも、そう、つぶやいたけどあたしも、同じだ。
それを見ていた、直斗も、天竜さんに言った。
「水野小路が、藤沢組を一目置いていたのは、その隠密性にあったんだ。
それが、失われた今、勝ち目は、ねぇぜ?
被害が大きくなる前に、諦めろ」
「うるさいです!」



