俺様先生と秘密の授業【完全版】

「出来るなら、天竜組のためになることも、愛莉さんのためになることもしたい。
 それで、今、一番両方にとっていいことは。
 これ以上、二つの集団の確執を深めない事で……
 愛莉さんを水野小路に帰すことだと思うんだ。
 オレはもう、動くことが出来ないけれど。
 早瀬倉と、吉住に単車を用意することは出来る」

 言って、岸君は、戸棚にかかっているキーボックスを指差した。

「そこのキーで、地下のガレージに停まっている天竜組の単車が動く。
 二人は、愛莉さんと伊井田さんを乗せて、早くここから出て行って……?」

 岸君は、にっこり笑ってそう言ったけど……それは。

「天竜組を本格的に裏切ることには……ならない?」

「なるかも知れないね。
 でも、東屋には、判ってもらえるように話すから」

 でも、それは、また。

 天竜組の組員さんと岸君の溝が、広がるような気がするけれども……他に、手段は、ない。

「……判った」

 そんな、言葉の意味を全部把握したかのように、直斗は、真剣な表情で、岸君に応え。

 キーボックスから適当なカギを二本、引き抜いた、そのときだった。

 大勢の、騒がしい足音がこの部屋に向かってやってきた。

 そして。

 部屋の扉が、勢いよく、開いた。