俺様先生と秘密の授業【完全版】

「岸君……!」

 青ざめた顔の岸君に声をかけると。

 彼は、閉じていた目をゆっくり開けた。

「愛莉……さん。
 早瀬倉……」

 ……その、岸君の疲れてかすれたような声に、ぞっとする。

「……ごめ……ん
 器械に、繋がれちゃった。
 今日は、もう、動けない……
 他のヤツに……見つかる前に……
 私を置いて……行って?」

「置いて行くなんて、そんなこと!」

 ……出来ないって言う言葉は、直斗に遮られた。

「ああ、そうさせて貰う」

「直斗!!」

「岸は、今。
 自分の血液を人質に、つかまっているようなもんだ。
 強制離脱の方法はあるけれど……多くの血を犠牲にして逃げなくてはいけないほど、切羽詰まった状況じゃない。
 岸は……もともと天竜組の人間だし。
 これは、本来『治療』に使う器械だ」

「……」

 黙ったあたしに、岸君は頷いた。

「私は……大丈夫だから……行って?
 愛莉さんは……帰らないと……
 本当は……どんな確執があったとしても……
 水野小路会との力の差を……逆転するつもりだったしとても。
 天竜組は……藤沢組は。
 愛莉さんだけは……人質にしちゃいけなかったんだ。
 水野小路の、あの怒り様では、きっと……」

 ……

 藤沢組も、天竜組も。

 跡形が無くなるほど、潰され、裏の世界からも、表の世界からも、消し去られてしまうだろう。