「……どうしても、ここから出なくちゃ……」
部屋にある唯一の出入り口の扉の前に立って、あたしは、唇をかみしめた。
どんなに遅くても、明日の追悼走の前には、ここから抜け出さないと。
兄貴とお父さんにとんでもなく大きな迷惑がかかる。
それこそ、狼とも、水野小路とも関係ないはずのあたしのせいで、取り返しのつかない事が起きたら、目も当てられないし。
何よりも、これ以上、誰かがケガをしたり、欠けたりする前に、どうしても、早く安全な所に行きたかった。
とりあえず、この部屋は。
本当の牢屋みたいに、バッチリ南京錠がかかった鉄格子があるわけじゃない。
ピンさえあれば、割と簡単に開けられそうな、一般家庭にあるカギが一つついているだけだ。
きっと、頑張れば割と簡単に出られそうだった。
……手さえ、自由になれば。
でも、それを見越して、天竜組のヒトも、あたしたちの手を縛ったんだよ、ね?
うーん、と力任せに引っ張ってもびくともしない両手をごそごそ動かしていると、直斗が言った。
「愛莉……俺のライター、そろそろ返せ」



