俺様先生と秘密の授業【完全版】

 ……え?

「……あたしが、普通?」

 加月の家から、水野小路に入って以来、誰もそんなコト、言ってくれるヒトはなかった。

 伊井田さんの言葉に、驚いて聞き返せば。

 彼女は、あっさり肩をすくめて言った。

「水野小路って名前は怖いけど、カッキーは、毎日、警察官と銃撃戦をしてるわけじゃないみたいだし」

「……映画の見すぎ、だってば」

「そうだよね~~
 だから、フツーに暮らしてるんでしょ?
 朝起きて、学校行って、ちょっと遊んで、それからご飯を食べて、寝る?」

「……うん」

「じゃ、やっぱり、普通だ」

 言って伊井田さんはにこっと笑った。

「親や、兄弟が、特殊な職業をしていると。
 こーんな事に巻き込まれることはあってウザいだろうし。
 ま、物事を良く判っていないヒトビトが、変に怖がったりしてるけど。
 カッキー自身は、悪いコトしているわけじゃないし、堂々としてればいいのよ。
 教室でも、自分の正体がばれるんじゃないかって、暗っら~~く黙ってないで。
 自分は、自分って、割り切って、みんなといろんなことしゃべればいいのに」

「伊井田さん……」

 あたし。

 伊井田さんの、意見に涙が出そうになった。

 あたし……そんな風に、思っても、良いのかな……?