俺様先生と秘密の授業【完全版】

 けれども……

「カッコいい……!」

 ……は?

 その、予想してなかった伊井田さんの言葉に、あたしの目が、点になった。

「カッコ……いい、デスか?」

 驚くあたしに、彼女は目を星にして言った。

「うんっ!
 カッキーってば、さぞかし刺激的な毎日を送ってるんでしょうねぇ」

「……へ?」

「今日、起こったよ~~な出来事も、日常茶飯事で」

「……ううん、初めてでびっくりしてる」

「毎晩、豪華なドレス着て。
 議員さんとか、危険な闇の世界のセレブのヒトとかとのパーティに出たり……」

「何よ、闇のセレブって。
 そんなの毎晩あるワケないし」

 きっと、伊井田さんの思っているヤツに近い集まりには、一回出たけれど。

 一般庶民なあたしとは、まるで場違いな世界だったので、以来、頼まれても行ってない。

「……じ、じゃあ、せめて。
 毎朝、家から出るときに、黒服のヒトが一列に並んで『お嬢さん、お気をつけて』って言ってくれるとか」

「……何の映画見たのよ。
 あたしが会長じゃあるまいし。
 あるワケないじゃん、そんなの。
 せいぜい、仲良いヒトが一人か二人。
 手でも振ってくれれば上等なくらいよ?」

 あたしが、そう言うと、伊井田さんは、ぼそっと、呟いた。

「なんだ、カッキー。普通のヒトじゃん」