俺様先生と秘密の授業【完全版】

 そう、確かに言ったはずだったのに。

 兄貴は、あたしの手を大事そうに包んで、ずぃ、と迫って来た。

「それ、本当?
 愛莉は、とても可愛いから……
 本当は、いろんなトラブル抱えてない?
 僕の目を見ても絶対大丈夫だって言える?」



 どき。



 あたしの目をのぞき込む兄貴の瞳は、真剣だ。

 吸い込まれそうな、少し蒼みのかかった瞳から、目が離せない。

「……大丈夫よ」


「本当に誰かをかばってないよね?
 愛莉ちゃん優しいから……」

 もし。

 あたしに何かあったら。

 クラスメートや、学校相手どころじゃない。

 暴力が専門のカタギじゃない職業の皆さんだけでなく……

 もしかしたら、国家でさえ、潰してみせるに違いない。

 そんな迫力満点の瞳から、あたしは、すぃ、と目をそらせた。

「そ……それよりも、もう、家に帰ろ?
 病院にも行かないといけないし」

「病院!
 そか、腕、痛むのか?
 くそ!
 直斗のヤツ!
 ちゃんと応急手当てしたから、大丈夫とか言ったのに!」