俺様先生と秘密の授業【完全版】

 それから、ワゴン車に拉致られたあたし達は。

 三十分以上、ぐるぐると市街をはしり。

 人気のない郊外にある、天竜組の事務所に連れてこられた。


 どさどさどさ……っと。


 着くなり、荷物みたいに放り込まれた部屋は。

 広さは二十畳ほどで、床に絨毯が敷いている……だけ。

 明るくない照明の他には、何も家具や……窓さえない、特殊な部屋だった。

 そこに、あたしと直斗。吉住さん、伊井田さんの四人が、手を後ろに縛られて押し込まれたんだ。

「みんな、無事か? 愛莉はどうだ?」

 ワゴン車の中で意識を戻した、早瀬倉先生の声に、みんなそれぞれ声を出した。

 どうやら、みんな無事みたいだ。

 あたしも、平気って言ったら、直斗はようやくほっとしたような顔をした。

「……岸はどうした?」

 心配そうな声を出したのは、吉住さんだ。

「途中、岸君だけ別の部屋に連れてかれちゃったみたいよ?
 ここは、どこ?
……大丈夫かな?」

 と、答えた伊井田さんに、直斗がつぶやいた。

「……ここは、藤沢天竜の自宅か。
 今まで、見つからなかった、藤沢組の事務所……かもしれない」

「じゃあ、岸君一人で、危ないし、ココロ細いかもしれないじゃない!
 早く探してあげないと!」

 焦ってじたばた動こうとする伊井田さんに、あたしは、静かに言った。

「たぶん、岸君は、大丈夫よ」