俺様先生と秘密の授業【完全版】

 昨日から、散々殴られていた岸君の身体が、限界に近付いてきていた。

 吉住さんが出した、狼が来るまでの『三分』という時間は。

 普段の生活では、あっという間でも。

 こんな風に切羽詰まった状態では、なんて長かったんだろう。

 しかも、たった二人で大勢を相手にしているときは、なおさら一分一秒がとても大事なはずなのに……

 狼たちは、時間通り現れなかった。

「吉住!」

「すまん! でも。
 もう、間もなくのはずだ……!
 いままで、予定時間がずれることは無かったのに!」

 本当に戸惑っている吉住さんに、軽く舌打ちして。

 それでも、岸君は自分で言った通り三分間は、ちゃんと戦ってた。

 けれども、四分を回った頃。

 疲れて、よろけた岸君を、天竜組が二人がかりで地面に引き倒し、うつ伏せに押さえつけた。

 その、岸君が空いた一瞬の穴。

 吉住さんの斜め後ろの死角から、天竜組の手が伸びて、彼の頭を殴ったんだ。

「……うっ」

 たまらず、吉住さんが、膝をついたその上を、天竜組が、五人がかりで飛び乗った。

「岸君! 吉住さん!」

 二人がやられてしまう……!

 あたしが、叫んで二人に近寄ろうとした時。

 別の天竜組のヒトがあたしの腕をつかんだ……包帯を巻いている傷ついた方を狙ったのはわざと……っ?