俺様先生と秘密の授業【完全版】

 そう、岸君の言葉に、吉住さんが応えた、次の瞬間だった。

 ワゴン車に乗せられる寸前だった二人は、ばっ、とお互いから飛び離れると。

 いきなり、近くにいる天竜組を殴りつけた。

 小声での会話を聞いていたはずのあたしでさえ。

 ……え?

 と思うくらい早い、ふい打ちだった。

 吉住さんは、まるでブルドーザーのように敵を蹴散らし。

 あんなに、ヒトと戦うコトを嫌っていた岸君が、拳を握る。

「きゃあ~~
 ダーリン、強っ!
 岸君、早っ!」

 突然始まった戦いに、伊井田さんは、のんきに応援していたけれど。

 あたしは、とっても心配だった。

「岸君!
 無理をしちゃ、絶対に……」

 ダメ、って言う言葉は。

 岸君が、殴り倒した天竜組のヒトの地響きに、消えた。

 その、殴ったばかりの拳を一瞬眺めて、岸君は、つぶやいた。

「そっか……オレだって。
 本当に守らなくちゃいけないヒトが、背中にいれば……戦えるんだ」