俺様先生と秘密の授業【完全版】

 あれ?

 吉住さん、伊井田さんのコト、気にしてる?

 あたしに、彼女はただの囮だと言い切っていたはずなのに……本当は、違うのかな?

 吉住さんの話し方は、あたしが、余計なコトを考えないように。

 気をまわしていたのかな? って思えた。

「ん、もう。
 カッキーったらお莫迦なコよね?
 わたしとそんなに仲良くないのに。
 自分一人で逃げちゃえって思わなかったの?」

「……あたし、逃げるのキライだし」

 勝手に囮にされて、怒っていいのに。

 なんだか伊井田さんの表情も、優しい。

「愛莉さんが……そうやって、頑張ってくれたのに。
 私が……オレが、何もしないって言うのは、ウソ、だよね?」

 今まで、黙っていた岸君が、ぼろぼろな身体を励ましてふらり、と立ちあがった。

「……吉住。
 狼の応援は、来るんだろ?
 あと、何分……?」

 立ったは、いいものの。

 途中で力尽きたように、吉住さんに寄りかかり、小声でささやく岸君に、吉住さんもささやき返した。

「……遅くても、三分」

「上等……それくらいなら、多分、持つ。
 女の子二人、狼に引き渡せれば、オレらの勝ち?」

「話の判るヤツは、大好きだ」