俺様先生と秘密の授業【完全版】

 

 そんな風に、決意とゲンコツを握りしめて、名乗り出たのに。

 あたしを迎えてくれたのは、天竜組のヒトビトの嘲笑と、吉住さんの呆れ顔だった。

 え~~ん。

 あっさりあたしを捕まえて。

 今さらやって来るなんて、莫迦なやつ~~と。

 ワゴン車に、あたしたちを押し込もうと。

 ゲラゲラ笑う天竜組の大笑いをBGMに吉住さんは、ため息をついた。

「愛莉さん。
 俺の話を聞いてましたか?」

 言葉の外に、もうすぐ仲間も来るって言ったでしょう?

 って響きがあるのがわかる。

「でも、だって……!」

「堂々とやって来るから、カッキー強くて助けてくれるのかと思った~~」

 伊井田さんまで、そんなこと言う~~

 ん、で、岸君に至っては。

 怒っているのか、一言も話してくれなかった。

 ひ~~ん

 あたしが、天竜組に囲まれてがっくり落ち込んでいると。

 吉住さんは、にこっと笑った。

「……でも、そんな愛莉さんが、好きですよ。
 怖かったでしょうに、俺たちを見捨てず。
 せめて、伊井田さんだけでも助けようと思ってくれたんですよね?」

「あたしの代わりに、伊井田さんを放して、って頼んでも無理だったけど……」