俺様先生と秘密の授業【完全版】

 そんな、あたしの心の声を知ってか知らずか。

 兄貴は、あたしの包帯だらけの手をそっと取って言った。

「……それで、誰が愛莉の手をこんな風にしたの?」

「え……?」

「僕の大事な愛莉ちゃんを傷つけたヤツは、許さないよ?
 ……絶対に、ね?」

「……!」

 のほほん、とした兄貴の口調の奥に。

 ちかり、と輝く氷のような刃がある。

 それを見つけて、あたしは思わず、ひやっと首をすくめた。

 ……兄貴、本気だから。

 もし、あたしが、ヒトの名前を不用意に出したら。

 本人はもちろん。

 その、お友達だって、ただではすまないかもしれない。

「えへ。
 自分で、ガラス窓に突っ込んじゃった」

「……本当?
 誰かとふざけて、うっかりやったんじゃないの?
 ……まさか、イジメられたり、男に追いかけられたり、なんてことは……」

「ないないないない」

 兄貴の目が妖しく光って、あたしは慌てて手を振った。

「あたし、これでも要領良いから、イジメなんてスルーだし。
 性格も可愛い子ならともかく、ねぇ。
 あたしみたいな、がさつなヤツを相手にするのなんて、居ないって」