俺様先生と秘密の授業【完全版】

 吉住さんのように、逃げられないように、なのか。

 直斗のように、自力で立てないのか。

 両腕を二人に支えられ、引きずられている。

 そして、伊井田さんの前に連れて来られると、乱暴に放り投げられた。

 どうやら、伊井田さんが『水野小路の妹』かどうかを聞かれたようで……

 岸君が答えを拒否するように横を向いた途端、また、殴られた。

 あまりに、ひどい光景に、岸君をかばったらしい伊井田さんも、頬を打たれた。

「……!」

 女の子も、容赦ないんだ……!

 はっきり言って、あたし、伊井田さんがあんまり、好きじゃなかった。

 ヒトのことを勝手にカッキー、なんて呼んで。

 直斗を騙してキスしたし、考え方だって、全く違うけど。

 そんな風に、ヒトから殴られなくちゃいけないほど、悪いコじゃないのに。

 もし、囮だってバレたら。

 腹いせに、もっとひどいことをされるかもしれなかった。

 岸君の方も、あたしが見つけられるまで、ずっと、殴られ続けるのかもしれなかった。

 もう少し待てば、兄貴達が来るかもしれないけれど、みんなは今にも、さらわれそうだった。


 ……そんなこと、させない。