俺様先生と秘密の授業【完全版】

「……なんのことやら。
 それに、狼は。
 多分。
 お前が思っているよりは、結束力があるぜ?」

「ああ。
 水野小路の名の下にある絆、ってヤツだろ?
 ……だから、その女が必要なんだよ!」

 言って、その男は怒鳴った。

「お前ら二人と、そこで、動けなくなってる『鳥』!
 拉致決定だ、コラ!
 明日の追悼走が楽しみだな!!」

 その男の宣言に、案外近い所から、岸がいたぞ!

 と言う声も、響く。

 天竜組に見つかった岸君は、どうなってしまうんだろう?

 それに、狼を引退した直斗まで、捕まえるなんて!

 直斗と、吉住さんと、伊井田さんが、天竜組に囲まれて、保健室から連れさらわれてゆく。

 身代わりの伊井田さんと、みんなが捕まって、あたしだけが、無事だった。

 このままじゃ、みんなが危険だった。

 けれども、出来ることなんて、何もなく……

 あたしは、ただ、吉住さんが望んだように。

 せめて。

 誰にも見つからないようにしていなくちゃいけなかった。

 それが、みんなの犠牲の上に立つ、あたしの義務だった……のに。