いくつもの足音は、そんなに待たずに飛び込んで来た。
さっき出て行った足音が、更に大勢の仲間を引き連れて、戻って来たんだ。
もはや、開けっ放しらしい保健室の扉から、どやどやとヒトが大勢入って来る気配がある。
そして、仲間が口々に喋る。
「……で調べてみましたが確かに『水野小路』って言う生徒は男女共居ないようです」
「何だと……?」
……そっか。
このヒト達には『加月』の名前は、バレてないんだ。
ちょっと、ほっとしたあたしの耳に、別な名字が飛び込んで来た。
「……だから、こっちに来る前に、犬に詳しい岸に確認を取っておけって言ったろ?
世話になった組を辞めるとかほざいてたが、天竜さんの甥なんだ。
最後くらい仕事をさせとけよ!」
やっぱり!
このヒト達、岸君と連携が取れてない!
今日、天竜組が来たのは、岸君が裏切ったわけじゃなかったんだ!
まだ、声を立てれば、見つかってしまうほど近くに、天竜組のメンバーがいた。
けれども。
一番、心の痛めていたことが、ウソだったから。
本当に、本当に安心した。
岸君は、裏切り者ではないんだ、って!



