「俺もケンカぐらい出来ますが、さすがに単車二十台分の人間と戦うのは無理です。
 理想は、十五分間。愛莉さんがヤツらに見つからない事ですが……」

「体育倉庫とか、物置に隠れた方が良いの?」

「いいえ。
 ヤツらも、まず、そういう所から探します。
 動くと、かえって目立ちます。
 丁度、ここは保健室ですから。
 ベッドの数が足りるので、俺や、伊井田さんと一緒に、布団をかぶって、寝ていてください」

 ふうん。

 伊井田さんも、かくれんぼ?

「吉住さん。
 伊井田さんも、守るんだ?」

 優しいんだね? って、続けようとしたあたしに。

 吉住さんは、怖い顔をして、クビを振った。

「守るのでは、無く、巻き込むんです。
 同じ年の女の子が側にいれば。
 相手が顔を知らない場合。
 どちらが、本当の愛莉さんか、判らないでしょう?」

「……え?」

「伊井田さんは、囮(オトリ)です。
 彼女には、申し訳無いですが、俺は、愛莉さんの安全しか、考えてないです」

「……ウソ」

 戸惑うあたしに、吉住さんは、頭を下げた。

「俺は、本来。
 そんな世界に生きる人間なんです……すみません……」