「直斗はどうやって、あたしをオトナにしてくれるのよ?」

 直斗の言葉に、そう聞けば。

 彼は、ふっと笑って言った。

「俺は、学校教師だからな。
 お前たち生徒(ガキ)に、正しい知識を詰め込んで、オトナに仕立て上げるのが仕事だ」

「な~~んだ、つまんない」

「つまんない、とはなんだ。
 当たり前のこと、かもしれないが、かなり重要で難しいんだぞ。
 いっぺんには、教えられないし、覚えられるわけじゃねぇから。
 一歩ずつ、経験を積み重ねて行くしかないんだ。
 途中で見捨てやしないから、せいぜいがんばって、俺について来るんだな」

「あ、担任でもないくせに、偉っらそ~~」

「ふん」

 そう、鼻を鳴らして胸を張る、直斗にちょっと笑って、気がついた。

 ……ココロが楽になっている。

 これって、そんな急に。

 オトナになんなくて、イイってことかな?

 自分の速度でゆっくり、前に進めばいいってことだよね?

 なんだかほっとして、もう一度笑ったとき。




 ……それ、が起こった。