案の定、すぐに吉住さんに見つかって。

「どこに行くんですか?」

 なんて、聞かれたところを『お手洗い』ってごまかして、伊井田さんと屋上を目指すことにした。

 途中。

 伊井田さんが、歩きながら自分の恋バナだか、武勇伝だかを勝手に話してた時は、まだ良かったけれど。

「じゃあ、カッキーはどうなのよ?」

 ……なんて、話題を振られ……つい。

 昨日の夜起きたことを、水野小路の名前を隠し。

 吉住さんの、更に上の『お兄ちゃん』の話として、話せる分だけ、話してた。

 ん、だけども。

 話し終わった途端の、あっさりとした『抱かれちゃえば?』発言に。

 あたしは、伊井田さんに相談したコトを、ものすごく後悔した。

 ……だって、ねぇ。

「伊井田さんっ!
 簡単に言うけど、これは、付き合うって決めた岸君への裏切りじゃない!
 ファースト・キスもあげられなかった上、そんなコトまで……!」

「へえ、昨日が初めての、ファースト・キス?
 それって、遅くない?
 やっぱり、カッキーお子様だったのねぇ……
 でも、初めての相手が、お兄ちゃんだって?
 禁断の匂いがして、ぞくぞくする~~」