「上に、四人も姉がいて、昔から私を着せ替え人形にしてくれた挙げ句。
 カラダが弱いと、大人になるまで、女の子のカッコして、病魔をやり過ごす風習があるほど、田舎なんだから!
 中学に入るまで、ズボンなんて、見たコトなかったぐらいなのよ?」

 なんて、岸君は拳骨を固めて主張し……また、あいたたたってうめいた。


 そ、それはまた、気合いの入った田舎だなぁ……

 今の時代に、一体どこの出身なんだろう?

「でも、そんな田舎から、こっちに出てくるのって、大変じゃなかった?」

 と。

 思わず聞いたあたしの言葉に、岸君は、深刻な顔をした。

「そりゃあ、もう、大変だったわよ。
 実家から離れて、空気の悪い都会に出たら、死んじゃうだの。
 受け入れ先の叔父さんは、本家一族から外れた恥さらしだから、跡取りの私が住んだら名がすたるだの。
 もうワケわかんないことをグダグダと、うるさくてね」

「……それで、カッとなって、自分の親父を殴り倒して出て来たって?
 しかも、打ち所が悪くて、親父は死んだって噂を聞いたぜ?」