「誤解?
 なんだ、それは」

 目を細めた早瀬倉先生に、岸君は肩をすくめて、いたたたっとうめいた。

「私、元々は、とんでもなく、山奥の集落に住んでいたんだけど……
 単車に乗りたくて街に出て来たの……」

 時々、峠を走り抜けていくライダーの姿は見かけても。

 バイクショップどころか、自転車屋さんも無いほどのド田舎で。

 どうしても、バイクに乗りたかった岸君は。

 先に、街で一人暮らしをしていた叔父さんの家に転がり込んだらしい。

 それが、天竜組の初代総長の藤沢 天竜(ふじさわ てんりゅう)さんだ。

「叔父さんは、単車好きな事もあって、私の居候を許してくれたけど……
 私、つい。
 家にいた時みたいなカッコで、叔父さんのマンションで、ゴロゴロしてて……
 ……東屋に会っちゃったのよね……」

 それで、現天竜組の総長の東屋は、岸君を女の子と間違えたらしい。

 確かに岸君はキレイだから、着るものにより……そして喋らなければ。

 女の子に見えるかもしれない。

「……って、お前、女装癖があるのか!?」

 嫌そうな顔をして、吐き捨てるように言う吉住さんに、岸君は仕方ないじゃないって言い返した。