「……よくも、まあ思い切り、殴られたな。
 今、沈黙の狼も、天竜組も両方の親組織同士、最悪な雰囲気だし。
 ……狼たちとつるんだことがバレて、天竜組に制裁されたのか?」

 傷だらけの岸君に、湿布だの、傷薬だのを手際良く貼り付けた早瀬倉先生が、ため息をついた。

「……覚悟は、してたのよ」

 と、一言づつ喋る岸君は、辛そうだった。

「完全に天竜組から……抜けるつもりで。
 東屋と話をしていたんだけど……
 主に、取り巻きから凹られちゃった……
 当の東屋が止めてくれなかったら……
 真面目にヤバかったかも……」

 そうか。

 天竜組の総長さんは、岸君をかばってくれたんだね。

 東屋さんって、ヒト。

 きっと、とても岸君の事好きなんだ。

 自分から、離れて行こうとしている岸君を、守ろうとするほどに……

「……なんだ。
 モテる男は、いいな。
 やっぱりお前、愛莉さん止めて、東屋とくっつけば良いのに」

 なんて、混ぜっ返した吉住さんの言葉に。

 岸君は、かすかに睨んで、首を振った。

「東屋さんは、私に、色々誤解をしていたのよね……」