俺様先生と秘密の授業【完全版】

 兄貴に締められた首を撫でながら、直斗は、言った。

「志(こころざし)って言うのがあるのに、俺が、積極的に怪我人作って、どうするよ?」

 そう、淡々と言う、直斗の言葉に。

 兄貴は、ため息をついた。

「直斗。
 お前、まだ愛莉のコトが、好きなら……
 何も気にせず、愛莉を、狙え。
 お前のやりたいことは、オレがやりたくても無理な事だ。
 それだけの強い意志があり。
 あの、岸とかいうガキに勝ち。
 さらに愛莉がお前に振り向くというのなら。
 オレからは、何も言うことはない」

 今までも、小さいのに、更に小さくささやくほどになったその声に。

 直斗は、ふ……と。

 苦笑いをして、応えた。

「俺がやろうとしているのは、ガキどもが、族チームに入ることの阻止だぞ?
 その族チームの中には、もちろん沈黙の狼も交じっている。
 狼の中から、優秀なヤツを引き抜いて。
 ヤクザの構成員に仕立て上げてる水野小路家とは、商売仇になるのに?
 本人は、悪い奴ではなさそうだとはいえ。
 愛莉が宿敵の天竜組の縁続きと、付き合うコトを許してみたり。
 お前が俺に、愛莉を狙え、と言うのか?
 ……信じられねぇ」